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タチ、フランソワ、ユロ


連夜の地震。 ビックリしたなぁ、もう。

ダイヤが乱れている電車を乗り継いで、新宿へ。
k's cinemaでの 『ジャック・タチ フィルム・フェスティヴァル』 の
後半プログラムを観るのだ。
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短編 『左側に気をつけろ』(1936年)は、タチは主演・脚本のみで監督はルネ・クレマン。
フランスの田舎町で農場を手伝っているロジェ(タチ)がボクシングのトレーニングに
見よう見まねで挑戦するのだけど・・・。 
長身のタチの身のこなしが笑いをさそう12分のまさに短編。

同じく短編 『郵便配達の学校』(1947年)は日本初公開。 郵便配達の訓練を受けたタチが
スピーディな配達を目指して自転車漕ぎ漕ぎ、街を疾走する。
この後に上映される『のんき大将』の原型となっている、タチ監督・脚本・主演の第1作。
たしかに、ここでのアイデアが『のんき大将』でも随所に使われている。15分の作品。

長編 『のんき大将』 (カラー版・1994年)。もともとは1949年にモノクロで公開された作品。
僕が前に観たのはモノクロだった。 製作当時、カラー版も同時に作られていて、
今回は修復されたバージョンでの公開。 ちょっとセピアな感じのやさしいカラー映像だった。
 村の広場に祭りがやってきた。 回転木馬や射的に映画のテント。 人びとは浮かれている。 
郵便配達員のフランソワ (タチ)は、アメリカの郵便配達の映画を観て、その合理的で
迅速な仕事ぶりに触発され一念発起。 自転車を駆使してスピーディな配達に躍起となる。
だけど・・・。のんびりした田舎町でもともとノンビリ屋のフランソワががんばろうとしても・・・。
短気なカフェの親爺、ヤギを連れて散歩しているストーリーテラー的なおばあちゃん、
祭りの木馬や屋台などを車に積んで巡業している香具師の兄ちゃん、、、と愛すべき
キャラクターがたくさん。

最後の『プレイタイム』 (新世紀修復版・2004年) は120分を超える長編。
オリジナルは1967年。先年、画像と音響がリニューアルされた。
これは映画館で観ないと良さがわからないんじゃないかなぁと思った。
ストーリーに没頭するのではなく、音と映像を楽しむ、というか。
帽子にパイプ、コートを着てパンツの裾は中途半端に短いおなじみユロ伯父さん(タチ)。
場所はパリ。近代的でまさにモダンな空港やオフィスビルにレストランや住宅を舞台に、
飄々としたユロ氏が過ごす、すれ違いと騒動の1日。
アメリカから観光で来ている団体旅行客の中のひとりの美女の行動も平行させて、
はなしに奥行きを持たせている。
音への過剰なほどのこだわりがスゴイ。ほかの作品もそうだけど、このプレイタイムでの
効果音のおかしみ。悪趣味になりそうでそうなっていないのは映像とのバランスが
絶妙だからだろう。
その映像においても、メインの被写体にフォーカスすることなく全体を撮り続けているので、
「ウォーリーをさがせ」とか「とこちゃんはどこ」とか、どこでだれが何をやっているのか
目を凝らしていないと見逃してしまいそう。
逆を言えば、すべての出演者が主役であるという想いがあるのではないかな、と思ったり。
どこをどう観てどう感じるかが観客にゆだねられているような。
ストーリー自体もそういう感じがする。
ちょっと疲れたけど、楽しめたな。

ジャック・タチの作品たちは、設定などはそれぞれに違いがあっても、似たような後味を憶える。
何かがはじまりそうなワクワクした雰囲気から始まって、ちょっとした騒動などありつつも淡々と
過ごして、それぞれがまた日常への生活に戻っていく。
この「祭りのあと」的な余韻が、ちょっと胸にくる。
そしてしばらく経つとこの余韻を味わいたくなってきて、また観たいなあ、タチ、と思うのだ。

満喫して映画館をでると、台風は過ぎ去っていて、青空が広がっていた。
吹いている風は若干さわやかだった。
by hey_leroy | 2009-08-11 16:29 | movie

たゆむあした、ゆるむゆうべ。カマクラ発、ユルマッタリな日々。読み返されない備忘録。


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