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グッジョブ!


『昭和の短篇 一人一冊集成』 (出版元:未知谷 2008年)

源氏鶏太、色川武大、吉行淳之介、戸川昌子、藤原審爾。
5人の作家の短篇小説ばかりをそれぞれ1冊ずつに収めたのを図書館で借りてきて読んでいる。編んだのは結城信孝。色川・吉行の両氏の本は割りと読まれていると思うけど、他の3名の作品については、現在あまり語られる機会がないのでないだろうか。 自分がこの選集を知ったのは、源氏鶏太の小説を探していて。昭和30年代の「三等重役」や「ホープさん」といった東宝サラリーマン映画の原作が源氏鶏太だったので興味をもった。読んでみると、軽妙なユーモアや、戦後の復興・経済成長からくる時代をとりまく明るさが爽やかにハツラツと伝わってきて、楽しい。 源氏の他にも「大番」や「てんやわんや」を書いた獅子文六などは当時一世を風靡したけれど、今や書店でその名前を見つけることはほとんどない。 新聞小説や映画原作でヒットを飛ばしたけれど、時代と共に徐々に忘れられてしまった。井伏鱒二も「駅前旅館」や「珍品堂主人」などのユーモア小説をたくさん書いたけど、彼には「山椒魚」や「黒い雨」といった純文学作品があるからなぁ。。。そういう代表作がないと後世にはのこりづらいのだろうな。

で、やっぱりこの選集は貴重だと思う。グッジョブ!といいたい。色川、源氏、吉行を読み終え、これから藤原、戸川へとすすむ予定。吉行淳之介の短篇は、スノッブで、独特の毒気やニヒリズムが漂う。ちょっとしたエグみも。そして、色川武大。やっぱりおもしろい。年月を経ても失われない文章の魅力がある。 

現在この5名分のみの刊行だけど、ぜひぜひ続編をだしてほしい。

最後に、編者の言葉。
「記憶に残る短篇小説は、クラシック音楽やジャズのスタンダード・ナンバーを想起させる。名篇と名曲。両者に共通しているのは短い時間のなかでリプレイが可能という利点と、何よりも長い歳月をくぐり抜けてきた耐久力にある。書棚から引っぱり出す一冊の作品集。お目当てのページを開く瞬間には心が躍る。この短篇セレクションは小説雑誌華やかなりしころの昭和の文化遺産であり、短篇小説の魔力を思う存分味わわせてくれる」
by hey_leroy | 2011-08-08 23:33 | books

たゆむあした、ゆるむゆうべ。カマクラ発、ユルマッタリな日々。読み返されない備忘録。


by hey_leroy