読む「小沢昭一的こころ」だぁ。
2012年 05月 31日
『小沢昭一的 東海道ちんたら旅』(小沢昭一・宮腰太郎 新潮社 1995年)
TBSラジオをキー局になんと今年39年目を迎えてなおバリバリ放送中の長寿番組、
「小沢昭一の小沢昭一的こころ」がスタジオを飛び出した。
といっても20年近く前の本だけど。
東京から東海道本線の各駅停車にのんびりゆられて京都をめざす旅。
小沢版「阿房列車」かと思いきや、百間先生のように目的もなくただ列車に揺られているだけで収まっているわけもなく、やれ美味い塩煎餅の店があればのぞき、観光客がこない忘れられた古刹にこころ和ませ、岐阜の裏の方ではたらくオネーサマ方に思いを馳せ・・・いやはや、「ちんたら旅」といいつつ、実に忙しい旅のように見受けられます。
スピード至上主義に背を向けての鈍行旅。大きな主要駅も避けて小さな駅ではどんどん降りる。しかし、どんな町にも何かしらの思い出話をもってらっしゃって、旅はちんたら、でも小沢さんのお喋りはまったくとどまることを知らないのでした。さすが芝居や放浪芸探訪で国内をくまなく旅してまわっているお方だ。
著者が小沢さんと構成作家の宮腰太郎さんの連名となっている事からも、ラジオ用に組まれた台本から起こした本なのだろう。もちろん小沢さんの旅が下敷きにはなっているけれど、この文章の密度の濃さ、ラジオ的くすぐりの多さは読み応え十二分。一気に読もうとするといささか食傷気味にもなりそうなほどで。老いを意識した記述も目立つけど、このころ60代半ば。まだまだ脂ものってますよ。今は・・・83歳だ!
単行本だと、カバーの裏が双六になっていたりと遊び心もたっぷりで楽しい。