あめりかむら
2012年 08月 03日
『 あめりかむら 』 石田 千 (新潮社 2011年)
この10年、主に随筆作品を発表してきた石田千さんの初の小説集。
小説だけど、独特の視線で日常を丁寧に描きとる文章は、ふだんの随筆の延長のような印象。フィクションでもノンフィクションでも、僕は好きな文体だし、大きな違いはないような・・・とも思ったのだけれど。小説であればこそ、盛り上がりというか、波風が立つ展開もある。そういった、少し熱を帯びたような部分や状況設定などに自分が入り込めるかどうかで、今後くり返し読む作品になるかが決まる。展開していくことは小説の醍醐味でもあるわけで、今はまだ石田さんの随筆に慣れているせいか、自分のなかで少し戸惑いがあるかも。随筆はどこからでも読める気安さがあるし・・・(甘ったれ読者)。少し時間を開けて、もいちど読んでみよう。
「あめりかむら」には、ここ数年の間に文芸誌に発表された作品や書下ろしとあわせて、2001年に「第1回古本小説大賞」を受賞したデビュー作「大踏切書店のこと」も収められている。
素適な酒場小説。
ある町の大きな踏切の近くにある小さな酒場。もともとは古本屋だったのだが、店主が数年前に無くなり、のこされた奥さんが本棚を1本だけ残して酒場に改装して引き継いでいる。常連は近所のおばあちゃんたち。
『かねの家の飲みものはビールと酒だけ。肴は、かまぼこ板に「酒の友」と書かれてあり、以下、「煮物」「干物」「つけもの」「おしたし」「とうふ」「やさい」「かまぼこ」と大雑把に書いてある。こちらは、ビールと煮物とか、冷やととうふとか言うだけ。とうふはがんもの煮たのや厚揚げを焼いたのだったりすることもあった。小さなガスコンロがふたつ並んでいて、ふみさんは作業をするあいだ、客に背をむける。』
こんな酒場、近所にあったらいいなぁ。
・・・あるといえば、あるか。
こういうとこだけ探しながら本を読んでるわけではないのですけどね。
でも、いろんなお酒や食べ物まわりの文章の引用、これからも気まぐれでやってみようかな、なんて思ってます。