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小さきことは、よきことかな

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 川本三郎さんの随筆 『君のいない食卓』(新潮社 2011年)を読んでいて、小さく刻まれた食べ物や細かい具材の食べ物が好きだという文章におもわず頷く。
 肉そぼろや炒り玉子が入った三色御飯とか、漬物を細かく刻んだ「かくや」とか。味噌汁の豆腐も小さい賽の目。逆に大串の焼き鳥を持てあましたりもしてたそうで。本人は自覚していなかったけれど、いまは亡き奥さんに指摘されて思い当たったと書かれている。
「何で三色御飯が好きか分かったわ。具がみんな細かいから。」
「何で焼き鳥が中々すすまないか分かったわ。肉が大きいからよ。」
 カレーの具も小さく切ってほしいと言ったらさすがに叱られたらしい。子供のころ母親がそうしてくれていたのを当たり前と思ってそのまま現在に至っているのだとか。

 自分も、どちらかというとそういう傾向がある。焼き鳥は小ぶりな方が好きだし。寿司もそう。そぼろご飯やキーマカレーも良いなぁと思う。毎夏食べてる山形の「だし」なんてその最たるものかも。でも、あれは食べることより刻むことが好きなのかなぁ。ビールは小ビン派で、お酒も一合徳利をおかわりしながらチマチマ呑みたい。・・・お酒はちょっと趣旨からズレるかな。まぁいいや。 あ、納豆は大粒が好きだ。。。

 この本には、ほかにも旅先の駅前食堂での出来事や、子供のころ食べたものの思い出など、短めの文章がたくさん収められている。なかでも、2008年に57歳の若さで病没された奥様との、30年以上の結婚生活でのエピソードが心に強く残る。そして、60代半ばで初めて独りでの食事に向き合うようになったことを綴った文章も沁みる。川本さんには 『いまも、君を想う』(新潮社 2010年)という、奥さんとの別れを綴った本もあるのだけれど、どちらの本も激することなく淡々と静かな調子で書かれている。ふだんの街歩きの随筆とトーンが変わらなくて、それがかえってこちらの気持ちを揺らす。悲しみが滲み出てくる。
by hey_leroy | 2012-09-04 21:00 | books

たゆむあした、ゆるむゆうべ。カマクラ発、ユルマッタリな日々。読み返されない備忘録。


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