昭和33年の東京の味と、平成24年の京都の中華
2012年 09月 11日
『東京味覚地図』 奥野信太郎・編 (河出書房新社 1958年)
昭和33年時点の東京の食べ物屋事情がわかる本。
浅草、銀座、上野界隈など地域ごとに執筆者を決めて、それぞれの街への思いとともにお気に入りの店を紹介している。
執筆陣は、檀一雄、戸板康二、池田弥三郎、高橋義孝、田辺茂一、戸塚エマ、三遊亭金馬ら。
このところの自分の「気になるアンテナ」にビシビシ引っかかる人たち。
浅草や銀座の店はいろんな作家がいろんなところに書いているので僕でも見知った名前が多い。この本で面白いのは、新宿・渋谷・池袋といった、戦後の闇市から興り、熱気を帯びて膨張の真っ只中にあった街の様子が詳しく書かれていること。それから、現在のような賑わいを見せる前の青山界隈や吉祥寺についても触れられているところだ。当時から50年以上経った今、残っている店はずいぶん少なくなったけど、当時の風俗を記録した読物としてなかなか貴重で楽しい本。執筆者達の文章の巧さは言わずもがな。
震災と空襲で東京の姿は大きく変わり、老舗といえども商売のやり方を変えたり、場合よっては商売自体をやめなければならなくなった。その一方で時代の勢いにのる新興店。そんな背景がありながら、東京は巨大な胃袋になっていった。
ちなみに昭和33年当時、有楽町・数寄屋橋近くの屋上ビヤガーデンからは、今までは川が見下ろせていたのが、埋め立てて首都高にする工事がまさに始まろうかというころ。戦後復興がいよいよ経済成長へ向かおうという時代でした。
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本日のお弁当。
グリンピースが必要以上に多い、豚肉の他人丼。
焼鮭。にんじんしりしり。
冷蔵庫一掃献立なり。
フリーザーもほぼスッカラカン。
明日は弁当はヤメにして、今年初でたぶん最後の冷やし中華でも食べにいこうかな。
・・・などと思いながら食後の散歩で本屋に入ったら、こんな本が平積みになってた。
『京都の中華』 姜 尚美 (京阪神エルマガジン社 2012年)
食欲そそられる写真がたくさん。
ごはん食べた直後なのに。
撮り方かな。
餡のとろみ加減とか、もろもろの質感がじつに良い塩梅で。
グルメ本には(たぶん)登場しないような京都の町場の中華屋さんたち。
地元の人たちに愛されているお店が載っているっぽい。
料理にも、食器にも、店の佇まいにも、働く人たちにも、味がある。
お店の背景的な文章もしっかり書かれているっぽい。
薄味で油っこくなくてダシがきいてて・・・京都の中華は独特な食文化っぽい。
本のつくりはちょっとマガジンハウス?ku:nel?っぽい。
と、ぽいぽい言うとりますが。
なにぶん立ち読みなもので。
でも、ステキ写真集(?)として手元においておきたい。
ホント、旨そうな画が、おおございますことよ。
きょう一日迷って、明日になっても欲しかったら買っちゃおう。
震災や戦災によって暮らしや文化が分断された東京。
京都は、前の戦争といったら応仁の乱だ、なんて冗談がある街だ。
商売の流儀や客と店との距離感など、そこなわれずに脈々とつづいてるんだろうなぁ。
なんてことを、今朝読み終えた本と、昼に立ち読みした本から感じた本日でありました。
ん~、やっぱり買おうかな。「京都の中華」。