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森のどろ亀さん

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森林学者、高橋延清さんの著書を読んだ。
白洲正子さんの対談集「おとこ友達との会話」を読んで、岩手弁での朴訥な語り口や、学者らしからぬ雰囲気に興味を持って。

『樹海に生きて -- どろ亀さんと森の仲間たち』 朝日新聞社 1984年
『樹海 -- 夢、森に降りつむ』 世界文化社 1999年

高橋延清(1914年ごろ - 2002年1月30日)。
東京大学名誉教授。とはいえ、北海道の東大演習林での研究・教育に没頭し、教壇には一度も立たず、教授会にも一度も出席する事はなかった。広大な樹海に日々泥まみれになって這いつくばる姿から「どろ亀さん」と呼ばれ、自分でもそう名乗った。

どろ亀さんの研究は「森をどのように育てるか」ということ。木材資源の確保と、生態系の発展を両立させるべく、「林分施業法」を確立した。山を丸裸にして植林していくのとは異なるやり方。森の状態を見極め、年老いた木を伐採し、若い木が育つように手をかける。下草も適宜刈り取り、種子が芽を出しやすいようにしてやる。根気の要る作業だけど、徐々に害虫や病気に強い森へと変わってゆくのだそうだ。人間の都合にあわせない森作り。この施業法は国内外で高い評価を受けるものとなった。

どろ亀さんの本には、専門的で難しいことは何も書かれていない。昼間は森に入り、夜は大好きなお酒を呑みながらエゾマツやカケスやノネズミに思いを馳せ、詩を書いたりしている。どろ亀さんは詩人でもあるのだ。この本にももちろん収められている。自然との共生について、論文ではなく、詩や随筆でガクモンしている。

今回読んだ2冊では『樹海 -- 夢、森に降りつむ』が良かった。
樹海の動植物の写真も多く入っているし、林分施業法のわかりやすい解説や、山小屋での生活のこと、森で出会う動物のことなど、どろ亀さんの仕事と暮らしの集大成となっている。詩もたっぷり。興味を持つきっかけとなった白洲正子さんとの対談も載っている。

どろ亀さんは「森の語り部」だ。
岩手の山奥の出身だからか、遠野物語を連想してしまう。
読んでるだけでマイナスイオンに包まれる感じ。
by hey_leroy | 2012-10-06 22:56 | books

たゆむあした、ゆるむゆうべ。カマクラ発、ユルマッタリな日々。読み返されない備忘録。


by hey_leroy