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芸の世界に触れるのだ、の巻

芸人・芸能に関する本を3冊。 登場するほとんどが名前も知らない古い芸人さんたち。
でも、楽しく読めた。 面白うて、やがて哀しき・・・

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『 色川武大・阿佐田哲也エッセイズ2 ~芸能~ 』  (ちくま文庫 2003年)
 「放浪」「芸能」「交遊」からなるエッセイズの第2巻。この「芸能」では、さらに芸人・唄・映画の三つの章にわけられている。小学生の頃から寄席に出入りし、戦時下の中学生時代には浅草を中心としたアチャラカ・軽演劇にどっぷりはまって過ごした色川武大。思い出に残る噺家、喜劇人、国内外の歌い手や映画の話。エノケン・ロッパ・金語楼・文楽・志ん生ほか有名な人から、今となっては振り返られることのない芸人まで。その多くは、今では映像はもちろん写真すらほとんど残っていない。 それにしても、おそろしい程の記憶力。そして、いきいきとした描写。時代の空気もビシビシと伝わってくる。 アンソロジーではなくて、大元の「あちゃらかぱいっ」、「寄席放浪記」、「なつかしい芸人たち」といった著作から読まなくては、と思う。


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岩波現代文庫からの2冊。

『 芸人 その世界 』  永六輔 
 もともとは1969年に出版された本。 古今東西の芸人の逸話をひたすらに収集してある。 永六輔は著者というよりは編者のような存在か。 芸人たちの奇行、言動、見栄、プライド、屈辱、下半身、生い立ち、死に際・・・芸談からゴシップまで。 多く取り上げられているのは江戸~明治あたりの歌舞伎役者であろうか。華やかな人気商売でありながらも、もともとの出自は賤民・河原乞食であるとされる役者稼業。 屈辱感や諦念をあわらしているエピソードも多い。 もちろん、可笑しい話、スケールの大きな話、突拍子のない話も。
「神田好山、占いで長生きは出来ないといわれたが、三年間の保証はつけられた。三年は大丈夫という占い師の面当てにその翌日自殺。「ざまァみろ、手前の占いは当らねェ」という遺書まであった。一龍斎貞鳳の本の中のエピソード。」
神田好山。講釈師かな?・・・なにもこの一つを選ぶこともないんだけども。


『 私は河原乞食・考 』  小沢昭一 
 私淑する小沢昭一さんの最初の本。↑ の「芸人 その世界」と同じく1969年が初出。これが力作。僕なんかがいうことではないけど、卓越した文章だと思うわぁ。後年の語り口調の文体はまだ見られない。
 「はだかの周辺」、「愛敬芸術」、「ホモセクシャルについての学習」の三章が中心となっている。 ストリップ、大道での物売り口上、見世物小屋、伝統芸能と男色、現在のホモセクシャル事情。。。 芸能とは何か。芸人とは何者か。小沢昭一が役者としてのアイデンティティーを探る。そこにはやはり河原者、被差別民であった先達の姿が重なる。・・・少くとも、この本が書かれた1969年ではまだ幾分影を落としていると言える。この本を書いたことがきっかけとなり、「日本の放浪芸」という大仕事へとつながっていく。
by hey_leroy | 2015-03-16 17:07 | books

たゆむあした、ゆるむゆうべ。カマクラ発、ユルマッタリな日々。読み返されない備忘録。


by hey_leroy