晩年シリーズ、いよいよ最終巻

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『けい子ちゃんのゆかた』 (新潮社 2005年)
『星に願いを』 (講談社 2006年)

庄野潤三による、夫婦の晩年のくらしを描いたシリーズ。
昨秋から読みすすめてきて、いよいよ10、11作目となった。
月刊の文芸誌に1年間連載された文章が、翌年の春に単行本になる。
それが11年間もつづいたことになる。

1作目の「貝がらと海の音」は1996年の本。70歳を超えたあたり。
11作目の「星に願いを」では80歳を超えている。

1冊で1年分の出来事、というわけではない。
(前はそうだったような気もするけど)
「けい子ちゃんのゆかた」は2002年9月から翌年3月までのこと、
「星に願いを」には2003年3月から6月までのことが綴られている。
年を追うごとにゆったりと、さらに丁寧に、マイペースに。
回顧や説明が重複するところも増えているけれど、その繰り返しが良いのです。

読み続けていると、毎日のできごとをただ記したのではないということがわかってくる。
取り上げられる題材は選ばれている。
夫婦のこと、子・孫・ひ孫たちのこと、ご近所のこと。
庭の植物のこと。やってくる野鳥たちのこと。
たまに旧友や恩師のこと。
ドラマティックな出来事はかなり意識的に排されているようだ。
ふだんの日々の積みかさねこそが、ドラマ。
毎日、毎年くりかえされることが静かな感動をよぶ。
・・・陳腐な言い回しになっちゃったけど、ホントにそうなのだ。

とはいえ、多摩丘陵・生田の山の上の暮らしにも、変化は起きる。
裏の雑木林でスーパーマーケットの工事がはじまり、メジロが庭に姿をみせなくなったり。
小学校低学年だったお気に入りの孫のふーちゃんは高校生だ。
ひ孫も2人誕生している。

平易な文章なので、「おだやかで微笑ましい日記だねえ」などと、パラパラ読み飛ばしてしまいそうになるが、それはとてももったいないことだ。
選ばれた言葉。練られた文章。"平易"は深い。
やはりこれはまぎれもない「小説」なんだな、と思う。

この11作目で、いわゆる「晩年シリーズ」は終わりとなる。
ひきつづいての連載は、自らの前半生の思い出を綴った自伝風小説で、「文學界」に掲載され、『ワシントンのうた』という単行本になった。そして、これが庄野さんの生前最後に出版された本ということになる。
つぎに読む予定。



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by hey_leroy | 2016-03-14 09:51 | books | Comments(0)
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