先日の銚子へのいきかえりで読んだ本。
『 むかし噺 うきよ噺 』 小沢昭一 (新潮文庫 1998年)
小沢昭一の文章は、自分にとって鎮静剤のようなものだ。
薬が必要なほど昂ることがあるかといわれれば、否とこたえるけど。
車窓の田園風景にたまに目をやり、ビールやポケットウイスキーをちびちび啜り、
小沢昭一の文庫本の頁を繰るシアワセ。
ラジオでの名調子そのままのおしゃべり文体のエッセイ集。
大胆だけど慎ましやかで、可笑しくてやがてしみじみ。
子供の頃の遊びの思い出。
オトナになってからのアソビの思い出。
映画やラジオの仕事のこと。
昔ながらの芸能のこと。俳句のこと。
職人の手仕事のこと。
和田誠のイラストも楽しい。
『でも、きっと追跡します。ええ、調べますとも。私の趣味、楽しみは、ゴルフでも酒でもなく、この世に消えたもの、オチメのもの、それ専門に追っかける”失せもの探し”あそび。』
オブラート工場をたずねたり、歓楽街・金津園の由来を新幹線に乗って調べに行ったり。
他の本では、昔懐かしい赤くて酸味の効いたハヤシライスを求めて彷徨ったり。
「日本の放浪芸」以外にも、いろいろと探求する旅はつづきます。
『少年時代のよみがえる時、私は生き甲斐すら覚えるタチの男なんです。いうなれば”少年時代オタク”。ウン、私にも、イイ年して、夢中になれることがあるじゃありませんか。』
そう。そんな小沢さんの文章にちょいちょい触れることが、自分の暮らしの肥やしにもなっているのです。
しばらくは、昭和から明治、さらには江戸のおもかげを追う読書がつづきそう(枕元に積んであるラインナップが・・・)。