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「家へ」



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 『家へ』  石田千  (講談社 2015年)


新潟の海沿いの町出身で、東京の美大の大学院で木彫を専攻している青年。
故郷には、母親と、内縁の夫の「じいさん」がいる。
そして近くの島には、実の父親が今の妻子と暮らしている。
彼らの関係は悪くはない。というか、奇妙なスムーズさと共に暮らしている。
閉鎖的で野次馬的好奇心が旺盛な田舎で生きていく術でもある。
「ややこしい関係が、あちこちにからまったまま、長年放置されている」
東京での暮らしと、たまに帰る故郷での数日。
そんな中で生じるさざ波、大波。
青年は何を感じ、自らの創作に取り込んでいくのか。

随筆集が多い石田千さんの、3冊目の小説(たぶん)。
淡々とした筆致で、じんわりくる作品かと思って読んでいたら、
後半はかなり動きがある展開で、ちょっと意外だった。

木彫の制作過程の細やかな描写。
新潟の方言。
実父が愛するボブ・ディラン。

石田さんの著作は、随筆の方が今のところ読んでいてしっくりくるけれど、
小説も、他の作家に無い味がある。
どちらも、すっとした立ち姿の良い文章・言葉遣いで。
娯楽性が高いものではないけれど、これからも読んでいきたい。



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by hey_leroy | 2016-05-02 23:00 | books | Comments(0)

唄めぐり

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『唄めぐり』   石田千  (新潮社 2015年)

いい仕事をされてるなぁ。

石田千さんは、最初の単行本から10余年、読み続けている作家さん。
ほぼ随筆。小説も数作有り。
その文章は、穏やかで、芯があって、澄んでいる。

今回の本は、日本各地をたずねて、その地の民謡を取材したもの。
芸術新潮に連載されていた。
もともとラジオの民謡番組に親しんでいたという石田さん。

北海道から沖縄まで、25の地域の唄と、ひと。
唄にまつわる場所、人をめぐり、自分も唄ったり、踊りの輪に入ったり。
そしてお酒もいただいたり。

羅列好きだから、並べちゃお。

秋田米とぎ唄(秋田)、こんぴら船々(香川)、ダンチョネ節・三崎甚句(神奈川)、
安里屋ゆんた(沖縄)、南部俵づみ唄(青森)、木曽節(長野)、佐渡おけさ(新潟)、
こきりこ(富山)、三味線餅つき(徳島)、刈干切り唄(宮崎)、げいび追分(盛岡)、
草津節・草津湯もみ唄(群馬)、牛深ハイヤ節(熊本)、大漁唄い込み(宮城)、
壬生花田植唄(広島)、安来節(島根)、綾はぶら節・今ぬ風雲節(鹿児島)、
河内音頭(大阪)、ヤイサマネナ・江差追分(北海道)、
筑前今様「呑み取り槍」・黒田節(福岡)、伊勢音頭(三重)、
最上川舟唄・酒田甚句(山形)、会津磐梯山(福島)、丸の内音頭・東京音頭(東京)、
あまちゃん音頭・新生相馬盆唄(福島)

農業、漁業、林業、酒造、海運や川下り・・・仕事の労苦と喜び。
神様への感謝。 自然への畏怖。 
祭り。日常の営み。 
生活は唄と密接だった。

そして、唄も旅をする。
人とともに旅をして、流れつき、種をおとし、花を咲かせる。

消え去ろうとしていたり、バラバラになってしまいそうな唄をまとめあげた先人たち。
ただ唄い継がれてきたというものではなく、それぞれに、なんとか遺すための尽力があった。

プロの歌い手さん(お師匠さん)も何人か登場するけれど、ほとんどは地元で仕事や家事の傍ら唄い継いでいる人たち。保存会だったり、高校の活動だったり。

読みながら、ときおりyou tubeで唄を検索して聞いてみたり。

旅に出たくなる。 当然のことながら。

挿入されている写真は、石井孝典氏による。いしいしんじ氏の実弟。
いしいさんのweb日記で名前はよく目にしていた。 
腰を据えて唄っている方々の姿、すばらしい。
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by hey_leroy | 2015-06-28 22:15 | books | Comments(0)

バスを待って

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『 バスを待って 』 石田千 (小学館 2013年)

石田千さんの新作は、短篇小説集。
20の物語は、すべて一人称で書かれていて、すべてにバスが登場する。
語り手は、30歳代のOLだったり、定年退職後のお父さんだったり、保育園に通う女の子だったり。
そして、アゲハ蝶であったりもする。
非日常に思われても、長い目で見たら日常のこと。
淡々と、しっとりと、じんわりと。
いつもと変わらぬ丁寧な筆致で、少しあったまる読後感。
挿画は牧野伊三夫氏。

あと、殿山泰司の 『JAMJAM日記』 (ちくま文庫 初出1977年)を。
読みたい読みたいと思ってて、去年復刊されてたのをやっと見つけた。
ジャズ好き、ミステリー好き、オンナ好きの自称「三文役者」。
数年前から酒を断ちつつも、でかけるのは浅草や新宿の酒場。
撮影の合間にモダンジャズを聴き、フリージャズのライブに足を運び、吼え、嘆き、囁く。
なんとも痛快な本。

「ヒヒヒヒ、う~ん!!」、「トンマ!!」、「フフフフ、アホンダラ!!」、
「ヒクヒク、ヒイヒイ、バカヤロ!!」、「阿呆!!」、「ヒイ!!」、
「キイキイ、キャンキャン、クククク!!」、「コツンと響くぜ」、「ベリーグウ!!」
「キイキイハフハフ」

独特な擬態語がタマラン。 これだけを抜き出してもなんのことやらだけど、本文に混ぜ込まれると、勢いとペーソスと自虐と悪態がないまぜとなって、笑いへと昇華するのであります。ぜひお試しを。
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by hey_leroy | 2013-10-06 15:23 | books | Comments(0)

あめりかむら

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  『 あめりかむら 』 石田 千 (新潮社 2011年)

 この10年、主に随筆作品を発表してきた石田千さんの初の小説集。
 
 小説だけど、独特の視線で日常を丁寧に描きとる文章は、ふだんの随筆の延長のような印象。フィクションでもノンフィクションでも、僕は好きな文体だし、大きな違いはないような・・・とも思ったのだけれど。小説であればこそ、盛り上がりというか、波風が立つ展開もある。そういった、少し熱を帯びたような部分や状況設定などに自分が入り込めるかどうかで、今後くり返し読む作品になるかが決まる。展開していくことは小説の醍醐味でもあるわけで、今はまだ石田さんの随筆に慣れているせいか、自分のなかで少し戸惑いがあるかも。随筆はどこからでも読める気安さがあるし・・・(甘ったれ読者)。少し時間を開けて、もいちど読んでみよう。
 
「あめりかむら」には、ここ数年の間に文芸誌に発表された作品や書下ろしとあわせて、2001年に「第1回古本小説大賞」を受賞したデビュー作「大踏切書店のこと」も収められている。

 素適な酒場小説。

 ある町の大きな踏切の近くにある小さな酒場。もともとは古本屋だったのだが、店主が数年前に無くなり、のこされた奥さんが本棚を1本だけ残して酒場に改装して引き継いでいる。常連は近所のおばあちゃんたち。

『かねの家の飲みものはビールと酒だけ。肴は、かまぼこ板に「酒の友」と書かれてあり、以下、「煮物」「干物」「つけもの」「おしたし」「とうふ」「やさい」「かまぼこ」と大雑把に書いてある。こちらは、ビールと煮物とか、冷やととうふとか言うだけ。とうふはがんもの煮たのや厚揚げを焼いたのだったりすることもあった。小さなガスコンロがふたつ並んでいて、ふみさんは作業をするあいだ、客に背をむける。』

こんな酒場、近所にあったらいいなぁ。
・・・あるといえば、あるか。

こういうとこだけ探しながら本を読んでるわけではないのですけどね。
でも、いろんなお酒や食べ物まわりの文章の引用、これからも気まぐれでやってみようかな、なんて思ってます。
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by hey_leroy | 2012-08-03 21:00 | books | Comments(0)

へいじつ

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平日の東京。

上野、吉祥寺、大手町、平和島・・・。
あちらこちらの街々にひっそりと一日たたずんで、行き交う人々の中に身をひそめる。
日常の中に見えかくれする異界のもの。
日常って、非日常のつみ重なり?

淡々と静かで細やかな描写が連なる。
随筆かと思って読みすすめると、ときおりするりとフィクションがすべりこむ。
おなじ街にいておなじ空気をすいながら、一歩ひいたところから目をこらし耳をすませている。
疎外感や孤独感とはちがうけど、読んでいるとなにか独特の湿度を含んだ感覚を覚える。

石田千さんの10冊目の単行本。
別冊文藝春秋に連載されていたのをまとめたもの。

はじめの方の文章は、なんとなく表現に懲りすぎているような印象を受けたのだけど、
読んでいるうちにすっと馴染んで入ってくるようになった。
自分が慣れたのか、途中文体が多少やわらかくなったのか。。。

どこかふと思いついた街にぶらりといって、一日ぽ~っとしてみたくなる。
師走であることをわすれて。

なにかを感じ取ることができるかは、自信なし。

『平日』  石田 千・著 (文藝春秋)
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by hey_leroy | 2009-12-07 22:37 | books | Comments(0)

山に登ったり、踏切をまたいだり


最初の単行本『月と菓子パン』から追っかけ続けている
石田千さんの新著が、2冊もでていた・・・。

『踏切みやげ』(平凡社) と 『山のぼりおり』(山と渓谷社)。
ゆっくり読みすすめて、本日両方読了。

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『踏切みやげ』は、2005年初版の『踏切趣味』の続編。
「彷書月刊」という雑誌に連載された原稿をまとめたもの。
東京を中心に、ときには出雲や弘前など、出かけたところで
踏み切りをさがしては、その佇まいを記録したり、
大またで何歩か測ったり。俳句もそえて。

『山のぼりおり』は雑誌「山と渓谷」に不定期連載されたものを収載。
北八ヶ岳の天狗岳、北海道の大雪山、屋久島の宮之浦岳、
そして富士山など、10もの山に登ったりおりたり。

「山」と「踏切」・・・どちらもテーマがしっかりとあるエッセイだけど、
石田さんは山とも踏切とも「つかずはなれず」な距離感をたもって、
そこにあるもの、そこにいるひとをていねいに描いていく。

ことばをかみしめるように読んでいくのが心地よい。
そして、湯上りのようなさっぱりとした読後感。


夜は、藤沢へ。
sausalitoでの、「羊毛とおはな」さんのライヴを観に。
はなさんのボーカルと市川さんのギター。
オリジナルにカヴァーも織り交ぜて。
とっても素敵で贅沢な時間でした。
なによりあたたかかったな。
来月出るニューアルバム、楽しみにまちましょう。
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by hey_leroy | 2008-06-14 23:51 | books | Comments(0)