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風流交番日記

早稲田~市ヶ谷と歩いて、有楽町線で銀座一丁目へ。
雪まじりの雨はやんだけど、さむいさむい。

京橋のフィルムセンターで古い映画を観る。
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松林宗恵監督の『風流交番日記』(1955年 新東宝)

よみがえる日本映画vol.3[新東宝篇]という特集上映の中の1本。
定員300名の大ホールにお客の入りは7~8割。かなりの盛況といってよい。

映画は昭和30年頃の新橋駅前交番が舞台。そこに勤務する小林桂樹が一応の主役で、同僚の宇津井健(若い)、上司の志村喬(渋い)らが人間味に富む巡査を演じる。駅前で新聞を売る少年や、客引きをする女たち、家出していた志村巡査の息子(天地茂。若いっ!)などのエピソードが同時進行的に連なって、笑えて泣ける佳作だ。
そして、当時の新橋の様子がたっぷり収められているのが何より素晴らしい。銀座や汐留方面を俯瞰したり、オリンピック前でまだ埋め立てられていない川が映っていたり。東京は水の町だったんだなぁというのがよく分かる。東京の都市計画、まったく勿体ないことをしたもんだなぁ。他にやり方はなかったんだろうか。

ぜひソフト化してほしい映画だ。

上映が終わったのが夕方4時半。今映画で見ていた新橋方面に足が向く。銀座の大通りを端から端まで。映画の余韻は今の銀座にはほとんど感じられない。でも、あそこならば・・・8丁目の金春小路にある酒場「樽平」にいこう。銀座8丁目、今は銀座ナインという商業施設になっているところも昔は川だった。今日の映画でもルンペン(多々良純)の結婚式を船上でやるシーンで、今の銀座ナインのあたりの川から陸を撮っている場面があって、全線座という西洋の古城のような映画館が映っていた。今は建て替えられて全線座ビル。その全線座の裏に当時も今もあるのが樽平だ。山形の蔵元の直営酒場。銀座6丁目で開店したのは何と1931年。現在の場所に移ったのは1952年。建物は戦前のものだという。ビルに囲まれていて一軒家とは思えない。
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開店5時の口開けの客となった。なんたって寒いから、燗酒から。住吉の樽酒をいただく。突き出しはひたし豆。ここには芋煮や玉こんにゃくなど山形の郷土料理が多く揃っている。自分は小鮒の甘露煮と自家製厚揚げをたのんだ。ゆるゆると2本ほど呑む。厚揚げ、衣が薄くてカリッとして美味。建物の向こうに川があるような気分で呑んだ。

勘定をしたら酒粕をくれた。
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蔵元直営ならでは。
ああ、粕汁であったまりたい。

新橋駅に向かう。さっきの映画とは別の町みたい。
でも、今の新橋にも新しくなりきれないガサツさは残っている。

なぜか業平橋行きのバスに乗って月島に向かってしまう。夜はこれから。
by hey_leroy | 2012-01-20 23:59 | movie

たゆむあした、ゆるむゆうべ。カマクラ発、ユルマッタリな日々。読み返されない備忘録。


by hey_leroy