『港、モンテビデオ』 いしいしんじ (河出書房新社 2015年)
小説であり、長編の詩でもあるような。
三崎から世界の港町・・・
セント・アイヴス、ラスパルナス、パルパライソ、モンテビデオへ。
イングランドの画家、アルフレッド・ウォリス。
「燈台へ」を書いたヴァージニア・ウルフ。
チリの詩人、パブロ・ネルーダ。
亡き者の魂に寄り添う。
「PRESENTA」(ここにいるぞ)というモールス信号。
場所も時間も自在に飛び越える、潮の香りに満ちた物語。
いしい氏のweb日記を長く読んでいる人にはなじみが深い、三崎に実在する魚屋のご夫婦が主人公となっている。それだけでグッとくるところもある。淡々とした筆致だが、展開はめくるめいたものがある。何かが心に積もったような読後感がある。