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三文役者万歳!


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『 三文役者あなあきい伝  Part 1&2 』  殿山泰司 (ちくま文庫 1995年)

やっぱり殿山泰司の本はキイキイと読ませてくれるわい!

この2冊、自伝というか回想録というか。
Part 1は出生から学校時代、役者修行、出征そして敗戦まで。
Part 2は戦後の役者稼業について。
生まれは1915年(大正4年)。銀座のおでんの老舗、お多幸の倅である。
ちょっと訳ありな生い立ち。銀座の真ん中での子供時代。
ドロップアウト、お女郎買い、酒浸り。。。
築地小劇場での新劇俳優から、映画界(カツドウヤ)へ。
中国への出征、敗戦、捕虜生活。 
弟の戦死。国家への恨み。戦争への恨み。
戦後、川島雄三、新藤兼人、吉村公三郎ら名監督との仕事。
日本映画の興隆期、絶頂期、下降期をすべて経験した役者といえる。
戸籍上の妻子と、実質的な妻子。
糖尿や肝臓の病からの断酒。
愛するジャズやミステリ小説。
・・・1989年(平成元年)73歳で死去。

シャイな東京っ子は、恥ずかしさを隠すように関西弁やら何やらで書きなぐる。
(実際は至極丹念に綺麗に書かれた原稿だったらしい)
自虐的にひとりツッコミし、世間やお上に向かって吠える。
でもさほど尖がった印象はなく、あたたかさがにじみ出ているのだ。
ユーモアとファンキーさ。ジャズ的な、ライブ感に満ちた文章。
1970年代に書かれたものだけど、今読んでも古臭さは微塵もない。
で、今だったら出版が躊躇されるようなキワドサもあって、そこがまた魅力的。

録画してある「裸の島」ほか、いろいろ見てみよう。

それからこんなのも。



殿山泰司、西村晃、小沢昭一。
「タイちゃん」「コウちゃん」「ショウちゃん」と呼び合う仲。
いいねえ。



by hey_leroy | 2016-09-29 23:05 | books

たゆむあした、ゆるむゆうべ。カマクラ発、ユルマッタリな日々。読み返されない備忘録。


by hey_leroy