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尾崎翠関連2冊


こないだ読んだ尾崎翠の「第七官界彷徨」が面白かったので、関連本を読んでみた。

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『尾崎翠』 群ようこ (文春新書 1998年)
『尾崎翠への旅』 日出山陽子 (小学館スクウェア 2009年)


明治29年鳥取県生まれ。女学生時代に文芸雑誌に投稿をはじめ、卒業後も尋常小学校の代用教員をしながら創作をつづける。大正6年、文学を本格的に志し退職。大正8年日本女子大学国文学科に入学、上京。しかし作品が「新潮」誌に掲載されたことが大学から問題視され、退学。以後東京と鳥取を行き来する生活がつづく。昭和2年、大学時代に親友となった松下文子n応援で下落合に暮らし始める。このころ林芙美子が自宅を訪ねてくるようになる。主に「女人芸術」誌に作品や映画評を執筆。昭和6年に発表された「第七官界彷徨」が好評を得るが、頭痛止めのミグレニン中毒が悪化し、昭和7年帰郷。その後2年ほどは地元紙などに小文や詩歌を寄せるも、昭和16年に書いた随想を最後に途絶える。昭和40年代に過去の作品が再評価され、書籍化の話が進むなか、昭和46年、74歳で死去。

実質的な活動は10年ほど。でも独特の世界は再発見後、多くの人に(それほどは多くないかもだけど)読み継がれている。

「私は日本の自然主義の手法、考へ方などからすつきりと一廻転した心境文学、触覚文学、そういふものを提供したいと思ひます」
「自然主義的な、ものの考へ方とか手法、あれで日本の文学といふものが非常に腐つたと思ひます。平板です。もう少し新鮮な立体的な文章を欲しいのです」(「女人芸術」座談会からの抜粋)

おべっかを言わず、文学的にも時代に迎合せず、おごることなく、自分の求める世界に没入ししていたのだろう。出版社へ売り込むようなことが苦手で、そういう面では遠回りだったり、世に出るべきものが出なかったりしているのかもしれない。

でも、これら二冊の本で尾崎翠の人生をたどってみて、言えることはひとつ。

やっぱり、作品だけを味わおう。

作家の人となりを知ることでより深く作品世界に入り込めることもあるけど(それも結局は妄想だけど)、尾崎翠の小説は、それだけで十分すぎるほど、個性的で面白い。



by hey_leroy | 2017-05-19 23:59 | books

たゆむあした、ゆるむゆうべ。カマクラ発、ユルマッタリな日々。読み返されない備忘録。


by hey_leroy