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小沢昭一的雑談のこころ

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『小沢昭一雑談大会』小沢昭一 (芸術生活社 1972年)

主に昭和40年代に雑誌や新聞に発表された文章をまとめたもの。
役者稼業のつれづれ、新劇のこと、交遊録、子供のころの思い出からオネエチャン系のはなし、大衆芸能のこと等々。
フランキー堺や大宅壮一らとの対談もあって読み応えあり。

で、たまに真面目なハナシになるところが、やはり良い。
小沢昭一さんの主張は、一貫して、ただひとつ。以下引用。

 (前略)子供たちに健康な体と個性豊かな人間性を持たせるためには、不適な今の東京生活の中で、私たちの日々はもはや戦いになってしまった。
 なかなかひまもないが、体のあいた時には、子供とフナや虫でも採りに、せめて東京を離れよう。そして、その行き来に、彼らに私の戦争体験を、苦しかった庶民の一人としての実感で話してやろう。もう四十になったおやじの、どうしても教えておきたいことは、あの戦争の話だけだ。
 あとのことは、むしろどうでもいいと思っている。彼らにまかせておいてきっと大丈夫だ。
 教育というよりも、それ以前に、親子一丸となって防がねばならないことがヒシヒシと押し寄せてきているような気がする。(「わが家のの教育方針?」毎日新聞 昭和44年3月15日)

戦争がどういうものだったか、子供や孫に語らず、目先の生活に追われ、あるいは意識的にその話題は避けて暮らしてきたツケというのは、小さくはない。高度経済成長やバブルで浮かれて、はじけ飛んだ時には、もう語れる人はどんどん減っていたのだ。教科書でのベンキョーではなく、身近な人が語るからこそ、自分の中身に残る。「これだけはゆずれない」ということを小沢さんは亡くなる直前まで語りつづけた。ユーモアのオブラートに包みつつ。


by hey_leroy | 2018-03-06 10:47 | books

たゆむあした、ゆるむゆうべ。カマクラ発、ユルマッタリな日々。読み返されない備忘録。


by hey_leroy