飄々と、しかし・・・


僕が落語や寄席に興味を持つきっかけになった人、
それは春風亭柳昇師匠。

かつ舌が悪くてはなしも唐突だったり
流麗な名人芸とはいえないけれど
マイペースでとぼけた味わいが
たまらなく笑いを誘ったものでした。
2003年に82歳でなくなる直前まで
高座に上っていて、僕もその前年1度だけ
みることができました。

その柳昇さん、著作も結構あります。
「寄席は毎日休みなし」、「柳昇の新作格言講座」などなど。
なかでも有名なのは自身の戦争体験を淡々と、
でも笑いも織り交ぜながら記した「与太郎戦記」(昭和44年)でしょう。
数年前にちくま文庫から復刊されて、読みました。

で、その続編といえる作品が先月復刊。


 『陸軍落語兵』 春風亭柳昇  (ちくま文庫)

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昭和46年初出。「与太郎戦記」に収められなかった戦地での
エピソードや、戦後復員してから落語家になるまでのことが
つづられています。

つねに死と隣り合わせの最前線、厳しいタテ社会の軍隊生活、、、
その状況はもちろんあやまりではないのだけど、
兵隊さんも人の子。
おっちょこちょいや温情家、お調子モノに悪運の強いヤツ・・・
個性的な兵隊さんたち(柳昇さんも相当だったはず)との
日常生活でおこった人間味にあふれる出来事が
ほのぼのとした文章で記されてます。
同じ落語家さんの文章でも、談志や小三治のような
スピーディーで切れ味するどいものとはまったく違うところが
柳昇さんらしくて。

そして、ほのぼのと可笑しく話をしていることが、
逆に戦争の凄惨さや厳しさ、苦しさを伝えているように
感じられます。

「兵隊さん」と一言で言うけれど、軍隊にとられる前は農家だったり
八百屋だったり勤め人だったり、それぞれ市井の人々だったという
当たり前のことを意識させてくれる数少ない本。
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by hey_leroy | 2008-06-05 23:02 | books | Comments(0)
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